2015年第9回浜松国際ピアノコンクールにて、三輪眞弘作曲「「虹機械」はじまりのうた」が2次予選課題曲として初演。

各年開催され、国内外の素晴らしいピアニスト達が競演する浜松国際ピアノコンクール2次予選を11月29日に聴きに行った。
浜松駅から直結しているアクトシティにある中ホールは当日券を並ぶお客様の列ができ、会場は満席だった。
2次予選は、1次予選を勝ち抜いた24人で、27日〜29日の3日に渡って行われる。
一人の持ち時間は40分、3つのカテゴリ−分けされた作曲家又は作品よりそれぞれ、出演者が選択して演奏しする。その内に「松国際ピアノコンクールのために作曲された日本人作曲家による新作品のうち、いずれか1曲。」という課題があり、演奏者は、 三輪 眞弘:「虹機械」はじまりのうた(7分程度)、山根明季子:イルミネイテッドベイビー(7分程度). からどちらかを選択して演奏した。

24人のうち、三輪 眞弘:「虹機械」はじまりのうたを選んだピアニストは、イリヤ シムクレル / Ilya SHMUKLER(ロシア)、ロマーン ロパティンスキー / Roman LOPATYNSKYI(ウクライナ)、マーク タラトゥシキン / Mark TARATUSHKIN(ロシア)の3名であった。

24名のうち3名しか演奏しないというのは、ピアニストから見てこの作品はどう映ったのだろうか?と自信を持って出版した私としては少々不思議に思っていた。
しかし、29日終日コンクールを聴いて、その理由も改めて三輪眞弘という作曲家の作品の素晴らしさもよくわかった。

今回の二つの課題曲には、難易度の差があったことが選ばれにくかった最大の理由だと思った。
明らかに「虹機械」はじまりのうたの方が難しい。

それは、速いテンポ指定に加えて奏者からみると奇想天外な音の順番であるから練習がこの上なく大変で、暗譜もしなくてはならない。加えて、曲に多くの自由度が与えられているのである。自由度があるということは、この曲を完成させるには、ピアニストは単なる技術的な練習だけでなく、「どうやって曲を解釈し作り上げていくか」ということも考えなければならない。

コンクール参加ピアニスト達は、本選までを想定して参加するわけで、各予選・本選での演奏曲はみな異なり、多くの練習してコンクールに挑む。そこに、加えて新作初演で暗譜の演奏をするわけである。そうなれば、多くのピアニストが、この二つの作品の中から、少しでも負担の少ない作品を選ぶのは通常のセレクトと考えられる。
そのような状況下で、「虹機械」はじまりのうたのを選んだ3人のピアニストの演奏は、この曲だけでなく、他の課題曲の演奏も含め皆とてもすばらしかった。

「虹機械」はじまりのうたの演奏については、三者三様の解釈で、それぞれ、まったく違う曲に仕上がっていた。もちろん、作曲家三輪眞弘はそれを狙っていたのだろう。

この曲は、コンピューターと人間の知恵比べともいえる。

三輪氏に取材したところ、コンピューターにある指示をして作品を作るのという単純なことではないといのがわかった。コンピューターにある指示をした段階で何万通りというシュミレーションができるわけで、そこから、自分自信の作品として良いと認められる一つをチョイスしていくわけであるからこの時点で、コンピューターVS三輪氏という果てしない戦いが始まる。これを征して、三輪氏の洗練した選択により、完成されたのが「虹機械」はじまりのうたである。

この作業の過程で、三輪氏の素晴らしさは、新しいシュミレーションを想像する力+選択に妥協をしない+その選択のセンスが三拍子そろっていることだろう。だからこそ、無機質なコンピューターから出てくる作品が人の心を捉える作品になるのだと私は思う。

そして、今回さらに、素晴らしかったのが、初演のピアニスト達が、この作品に対して、超絶したテクニックはもとより、それに加えて、非常に積極的に自分たちの音楽解釈を盛り込んで演奏したことだ。

産業界では、ロボットに感情というプログラムを仕掛け、プログラムされた感情が使用者によって、増幅されロボット自身があたかも人として成長していくようなものが開発されつつある。まさに、「虹機械」はじまりのうたはそれと同じだ!と私は思った。つまり、無機質な音の羅列が感情を持つように三輪氏が細工して仕掛け、その作品の力をピアニストが引き出すことで、人の五感と共感し合える…。三輪氏は、きっと文明VS人間(生命)が究極のテーマなんだろうなあと、演奏を聴きながら私は思った。


もともと、このコンクール予選参加者のうち9名がこの曲を予定してくれていた、2次審査までいけなかった演奏者には、ぜひ、虹機械」はじまりのうたを別の機会に演奏してもらいたい。もちろん、それ以外の多くのピアニストにも演奏してもらいたい。そして、奏者の数だけ新しい解釈が存在出来るのであるから、私はそれらを是非、今後、聴いてみたいと思った。

私は、様々な初演を聴くたびに、現代音楽はこれからどういう方向になるんだろうか…、先端芸術と言いながら出尽くした感の有る昨今、新しいことなんて生まれるのであろうか?、などと現代音楽や先端芸術の将来について常日頃考えているのであるが、このコンクールを聴いて、私の中で一つの方向性に対する期待感が大きく膨らんだ。


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